着メロを打ち込み、MDに録り、iPodに入れた10年。覚えているのは手間のほう。
2026年8月28日
2000年代の音楽の話をするとき、思い出すのは曲名より聴くまでの手間のほうかもしれません。
この10年で、音楽の手に入れ方と持ち運び方が3回変わりました。 CDを借りる、MDに録る、機械に入れる。そして最後にダウンロードが来ます。 曲そのものより、その手順を覚えている人が多いはずです。
携帯の着信音を、自分で用意する文化がありました。
初期の携帯には、音符を1つずつ入力する機能が付いていました。 雑誌や本に楽譜のような数字の列が載っていて、それを見ながら入れる。 1曲入れるのに30分以上かかりますが、鳴った瞬間の達成感がありました。
機種の性能が「何和音か」で語られていた時期があります。 4和音、16和音、40和音。数が増えるほど原曲に近づく。 携帯を買い替える理由に、音の良さが入っていました。
月額の会員制サイトから曲をダウンロードする形が定着します。 何曲まで、という上限があり、月末に急いで使い切る。 入りたいサイトが複数あると、月額がじわじわ増えていきました。
2002年に、音源そのものを着信音にできる「着うた」が始まります。 打ち込みではなく、本物の歌声が鳴る。これはかなりの衝撃でした。
2004年には1曲まるごと落とせる「着うたフル」が登場します。 ここで携帯が、音楽プレーヤーの役割を持ちはじめました。
| 〜2001年ごろ | 打ち込み、和音。自分で作る |
|---|---|
| 2002年〜 | 着うた。サビだけ落とす |
| 2004年〜 | 着うたフル。1曲まるごと携帯に入る |
サビだけを持っている状態、というのが今から見ると独特です。 1曲のうち30秒しか知らない曲が、何十曲もありました。
2000年前後に、シングルCDの形が変わります。 細長い8cmのものから、アルバムと同じ12cmのものへ。 棚の並びが揃うようになった代わりに、あの縦長のケースは消えました。
新譜は借りるものでした。
2000年代の前半、いちばん身近だったのがMDです。 CDから録音して持ち歩く。1枚に70〜80分ぶん入ります。
「好きな曲を集めた1枚を作って渡す」という行為は、この時期に完成しました。 いまのプレイリストとやっていることは同じですが、 1枚作るのに録音時間ぶんまるまるかかる、というのが決定的に違います。 80分の録音は、80分待つしかありません。
2001年にiPodが発売されます。日本で広く見かけるようになるのは、そこから数年後です。
| カセット・MD 1枚 | 70〜80分。だいたい15〜20曲 |
|---|---|
| 初期のiPod | 1000曲くらい |
| いま | 上限がない。持ち歩くという概念が消えた |
「全部持ち歩ける」ようになったことで、 1枚に何を入れるか選ぶ作業が無くなりました。 選ばなくてよくなったのは楽ですが、あの選ぶ時間が音楽との関わりそのものだった、 という感覚は、たぶん体験した人にしか分かりません。
全員が同じ曲を知っている、という状態が成立していた最後の時期でもあります。
いまは、それぞれが別の曲を聴いています。 2000年代を懐かしむ話が成立しやすいのは、 あの頃は全員が同じものを聴いていたからです。 共通の記憶がある、というのは、それ自体がめずらしい条件でした。
録音の待ち時間、返却期限、1文字ずつの入力、絡まったイヤホン。 どれも今なら無くしたい手間ですが、覚えているのはそこです。
自己紹介に音楽の話を書くときも、 好きなアーティスト名だけを並べるより、 「MDに何を入れていたか」のほうが、同世代には確実に刺さります。
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文房具から音楽まで7つに分けた総まとめ。
ストラップ、プリクラ、MD、写ルンです。
自販機の顔ぶれと、部活のあとの1本。